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DAY29 (07/11/01掲載)
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「高まる緊張感」
1936年製のダービー・ベントレーを駆って
前日までクラス3位のイギリス人、#69のポール・カーターは朝から考えていた。
昨日あれだけ頑張って、彼と前日2位の”空飛ぶベルギー人”
シェヴィー・ファンジオ・クーペのハビエル・デル・マルモルとの差はたったの18秒。
どこをどう走れば、今日の4つある長いSSで彼との差を
もっと詰めることが出来るのだろう…?
傍から見る彼は”やる気マンマン”だ。
しかしラリーとは、そうそう思惑通りに進むものではない。
ハビエルはポールの挑戦を受けて立つかのように好走を見せて
この日全てのSSでクラス・トップのタイムを叩き出し
結局ハビエルは、9時間21分42秒のステージ合計タイムで
ヴィンテージ・カテゴリーの一番時計。
でも後続からのプレッシャーを感じながらの運転だったのは明白で
中国を離れて以来、きっと彼には一番大変な日だったかも?
片やポールはと言うと、あの意気込みとは裏腹に
9時間22分16秒のステージ合計タイムで、今日もハビエル
の後塵を拝むクラス3位。
2位の#87、ハビエルと同じファンジオ・クーペのメリーウェザー組からは
わずか4秒の差だった。
ここまで世界を半周してきて、まだ各車が秒差で争っている現
状にはビックリだが
皆が優勝カップ目指して頑張っている。
クラシック・カテゴリーでも同様の展開が。
タクシー仕様のフィンテール・メルセデスを走らせる
#132、リンドナー/ウィースト組はロシアを出るまで
2位のジャガーと30分以上のセーフティ・リードを保ち
このままパリまでクルージング気分でラクラク優勝か、と思われてたのが
ここにきて状況が急変、スムーズな路面の得意なジャガーがバルト三国で躍進を見せ
目下、走る度にメルセデスとの差を詰めている”巻き返しモード”に突入中。
プレッシャーがくたびれた車とクルーに襲い掛かり
リンドナーはこの日、SSで溝に車輪を落とす痛恨のミスを誘発。
しかし追いかけるジャガーもまったく同じ場所でスタックしてしまい
コース復帰にトラクターの助けまで借りるトホホな顛末となった。
リザルトに目をやると、ステージ合計でリンドナーが9時間28分4秒。
ジャガーのウォーツが9時間35分16秒、サルベージに掛かったタイムロスが痛い。
今日の”頑張ったで賞”は、60馬力にも満たない非力な1959年製のVWを華麗に操り
9時間24分45秒と立派なタイムを出した#102のステープル/ケネディ組に決定。
ドライバーの強い意志を感じるテールをガンガン流しながらの攻めっぱなし的走り方で
最後にはジャガーさえも31秒ほど退け、このステージでクラス2位の成績となった。
1951年製のライリー・RMBを駆る#108、ウィルキンソン夫妻組は
クラス4位と踏みとどまった。
今日のSSはポーランドの国際モーター・クラブの手によるもので
彼らの専門的な技量の下、とても効率の良いタイム・トライアルが
素晴らしい地形を利用して行われた。
ロシアを脱出してからの4日間、我々はヨーロッパの”ベスト・ロード”ばかりをチョイスして
それこそ”ラリーストの本懐”とも言えるようなステージを走りつないできた。
そしてこの”夢のような日々”はもう1日だけ続き、その翌日からは
いよいよパリのグランド・フィナーレに向けて終盤戦に突入する。
VWに負けてしまったジャガーは、その名誉を挽回させるべく明日に猛チャージを掛け
ヴィンテージ・クラスの面々は、いずれも”ダンゴ状態”から抜け出す機会を
手薬煉を引きながら窺うだろう。
パイオニア・クラスで首位を行く、1923年製ロールス・ロイス・シルヴァーゴーストの
#16、ブラウン/スティーヴンソン組は、後続の同じ車両を駆る
#15のジョーダン/マキルロイ組に30分のリードを保って余裕の表情。
遥々ヨーロッパくんだりまで来ながらも1分1秒の争いに杞憂するなんて
モンゴルの砂嵐の中、野営の準備にてこずっていた時分に
いったい誰が想像し得ただろうか?