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<< No12(03/06/19)   No14(03/06/20)>>

DAY13 (07/06/19掲載) 
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大脱走 −− THE GREAT ESCAPE

我々は昨日、モンゴルより集団で脱走を敢行した・・・までは良かったものの
残念ながら最前線よりのレポートが今日は無し。
肝心のコミュニケーションが一番良い時に限って不調という有様。

国境の通過は、かねてからの悩みの種で
このモンゴル北西部にあるちっぽけな前哨地は
海外からのツーリストが通過できるようになったのがごく最近。
せいぜい多くて一日に’片手’程度の往来しかないであろうこの場所に
果たして「田舎のお役人」たちが混乱せずに
この’大所帯’の面倒を見れるのだろうか?

そして我々は、今まで見た中で一番大きな集団が
越境していくところに出くわした。
憲兵は一礼こそしたものの、その後一度として彼らに注意を払う気配が無い。
赤白の国旗は午前9時を回らないと掲揚されず
そこにはただゲートがあり、そして無人の土地が広がるだけ。
なのにロシアへ渡る前には、各ステージごとに無数の事務手続きが必要となる。
(最初の手続きはモンゴル通貨での最後の支払い)
ちなみに彼らお役人たちは、1時間半もの昼休みを取ることから
これら手続きを素早くこなしつつ、ジェントルにプレッシャーを掛けるのが
我々からのアドバイスだ。
そしていよいよ無人の大地に降り立ったその時点で、ゲームは振り出しに戻る。
遂にここまで来た!! 
結局、かなりの数のクルーが昼までに手続きを終えることが出来ずに
長い一日をここで過ごすことが決定してしまった。
片やロシア側の入国手続きは、一度始まってしまえばその後はスムーズで
ラリーのオーガナイザーが事前に手渡していた巨大なシートを広げて
誕生日やらシャーシの番号やらパスポートの番号やらを丁寧に確認したりと
我々はその勤勉な態度に感銘を受けたほどだ。
そういえば国営テレビのクルーも入国の様子を収録しに来ていた。

スイーパー・メカニックたちは朝の3時まで戻って来れなかった。
何人かのクルーたちは、どうやら困難の峠を越えた様子か?
我々は大体80台ほどの車がビースクから出発するのを見送ったが
ゴールド・メダル候補のクルーたちが練る戦略と同じくらいの
シビアな状況というものは、これまで特に見受けられなかった。

現時点で35名のクルーが、ゴールド・メダルを獲得する権利を有している。
ここまで全コースを走破し、すべてのCPにオンタイムにて到達。
まだ全ルートの半分すら消化していないのに、100名近くのクルーたちが
すでにこの条件を達成できずシルバー・メダルに甘んじ
ナビゲーションに失敗したりメンテナンスに時間をとられたりで
丸一日を棒に振ってしまったものはブロンズ・メダルを目指す。

パイオニア・カテゴリーではトップの入れ代わりがあった。
現時点で#16、ブラウン/スティーヴンソン組の
ロールス・ロイス・シルバーゴーストが走破タイム 63時間22分9秒で
もう一台のシルバーゴースト、#15のジョーダン/マキロイ組に
31分14秒の差をつけて首位に踊り出た。
そして3位には、あのランチャ・テータを駆るジャン・ヴォボリルが。
ここまで片腕1本で車を操り、ラリー全体を鼓舞するかのように
困難にも怯まずゆっくりと着実に前進する彼は
コ・ドライバーが彼の元を去ったあともスペアパーツを積み込んで
モバイル・ワークショップのアシスタンスすら受け入れず走り続けている。
ヴォグゾールのマイケル・グリーンは8位にまで順位を落としてしまった。

ヴィンテージ・カテゴリーでは
#88、ウィリアムス組のシェビー・ファンジオ・クーペが
2位のハビエル・デ・マルモルの良く似たシェビーに8分の差をつけてトップ。
信じられないことにハビエルの車には、金属のブッシュがサスに組み込まれていて
でも通常のゴムのブッシュがヘタって本来の役目を果たさなくなるよりかは
イースト・アフリカン・サファリであらゆるサスのトラブルに遭い
ライバルのシェビー・ドライバーに修理してもらった現状の方が
まだマシとのことだった。
3位にはこれまた同種のシェビーを駆るメリーウェザー組のシェビー
そしてカーター/フェアクロー組のダービー・ベントレーと続く。
1931年より以前に製造された車が対象となる
‘ヴィンテージ・スポーツ・カー・クラブズ・アウォード‘は
ジェロルド・リューマンのベントレー・6,5ツアラーが
現時点での最有力候補となっている。

クラシック・カテゴリーの上位争いにも若干の変動があった。
VW・ビートルのガリック・ステープルスは3位に転落
猛チャージの追い上げを見せたジャガー・MKUのウォーツ/シャックルトン組が
2位に浮上、しかしタクシー仕様のメルセデスを駆るハンス・ペテル・リンドネルは
後続に30分近い大差をつけて首位の座をガッチリ守っている。

しかしロシア横断を控えてこれらの順位はまだまだどうなるか分からず
さらにラトビア・エストニア・ポーランドでは地元のクラブが開催する
SSが多数待ち構えている、気の遠くなるような先の話だ。

ロシアの辺境地帯は印象的だった。
国境を越え、モンゴルの砂漠地帯に背を向けて走り出すと
30分もしないうちに辺りは緑に包まれ、そして2週間ぶりに樹木を見た。
国境から離れるにしたがって緑は段々と濃くなり
イタリアのコルチナを思わせるような急峻でゴツゴツした山頂は
多数のクルーたちにまるでオーストリアを走っているような気分にさせた。
かと思うと今度は北ウェールズみたいな景色になったりと
まるでセットフォードに向かうA11の松並木のようだ。
そう、我々はアスファルトの上を走っている。
ここまでは舗装の具合もよく、まさに歓迎すべき状況だが
道端の警察官が検問の為、赤い棒を振って我々を止めようとした。
特派員の車に同乗してた別の警察官が手を振り返して
結局は事なきを得たが、これからしばらくの間
これらの官僚主義にまつわる余計な手続きでうんざりする状態が続いた。

‘負け犬たち‘の様子はどうだろう?
‘フライング・ダッチマン‘ことゲメルト/デ・スワルト組の
シンガー・ルマンは27位に滑り落ちた。
この黒くて小さな2シーターは、2つの小さなスーツケースと共に
田舎のデコボコ道をピョンピョンと飛び跳ねるようにして走っていたが
もう上位を走るベントレーたちを打ち負かすことも無さそうだが
代わりに鉄の塊のようなヘビー級の車が‘もうすぐTOP10‘圏内に浮上
更なるジャンプ・アップの好機を窺っている。
‘2枚のブリキ板とマッチ棒の束で出来た車‘と当時揶揄されたあの車は
何度も素晴らしいパフォーマンスを見せ、その僅か排気量1リッターのエンジンは
今日も歯切れの良い音を立てて走っていた。
チャンス組の2CVはブンブンとここまで走り続け
そして皆寝静まった夜中にそっと起き出して洗車などしたりしていた・・・
これ以外に、どうしてあの車のホイールがいつもキレイでピカピカなのか
どうやって説明できるのだろうか?

何人かのクルーたちは、すでに遠い記憶となった砂漠での出来事を肴に
ディナーへと出掛けていった。

#45、ロールス・20のデニス・ウィルソン談:

 「ジル(奥様)はdesert(砂漠)のスペルがdessert(デザート)にならない限り
 もうコリゴリだと。 我々は今、モンゴルとの国境から1000km離れた
 シベリアの首都にある良いホテルにいるけど、彼女曰く 
 サン・オイルってのは砂とエラく相性がイイらしくて
 すべて洗い流すのにバスタブ3杯分のお湯が必要だったらしい。
 今晩は彼女を間違った方法で撫でないよう気をつけないと・・・」

ロールスの方は、排気系以外は調子良いらしい。

 「エキゾーストはオーガナイザーから送られてきたファクトシートどおりの
 モディファイを施してなかったんだ。 だから準備のアドバイスをすべて無視した
 他のクルー同様、マフラーは今頃ゴビのどこかで転がってるよ・・・」

明日は休息日、でもモバイル・ワークショップのスタッフもお休みなので
修理が必要な面々は、我々を大挙して出迎えてくれた群集を掻き分け
ローカルの修理工場を探し出して自力で手筈を整えなければならない。
そういえば傍らには国営テレビのクルーたちもいて、我々はホテルに車をつけて
ウエルカム・ドリンクのビールを啜るところまで撮影されていた。