彼方へタイトル

「彼方へ」の続編がスタートします。2年ぶりに筆を執りました。タイトルは「続・彼方へ」ユーラシア大陸、シルクロードの憧憬、モンゴルへのはるかなルートへの意欲。そしてさらにはチョモランマを目指すという、その果てない夢とその実現に向けた闘いの日々。沈み行く太陽を追い求めて旅は西へと続く。「続・彼方へ」まさにSSER - Chronicleが完成領域へ。

「続・・彼方へ」

第8話

(2009/04/02)

通算第87話

「西域の果て」

美しく巨大なウブス湖のほとりにビバークの適地が見つけられなかった。美しいのは美しいのだが、気象条件に左右されないビバークを選ばなければならないのだ。

ウーランゴムという町に近づくと、西に広がる巨大な山塊が飛び込んでくる。さらにその奥に雪を頂いた高峰がのぞく。氷河を抱く4000m級のハルヒラー峰だ。名前もよっぽどそれらしいではないか。それにしてもここはモンゴルの最果ての地だ。

モンゴルでは最果てでも、ここには北に向かう国境が存在する。ロシア連邦のトゥヴァ共和国とかアルタイ共和国に通じる。この秋にはバイクで中国からカザフ、そしてパリまで走る計画だから微妙に気になるエリアだ。しかもまさにハルヒラーの裏側つまり西側にあるジュンガル盆地は、まあハイライトのひとつといって良い。そのアクセスは簡単ではない。

「モンゴルから行くのなら、なんの問題もないんだけどなあ。中国からカザフが難しいよなあ。」

と準備が終わったはずの「西安-パリ」の旅への心配もこのような辺境の地にいても気にかかる。

北京からトヨタのプリウスチーム。そして西安からはBMWモーターサイクルのチーム。さらにこの先の国境を越えてSSERのモンゴルスタッフらが、真っ白な巨大なピックアップトラック「タンドラ」を駆って、この3つのチームがひとつにまとまって西に向かうという計画なのだ。上手く行くのだろうか。

街に着いた。街路樹や街躯が少しほかのモンゴルの町とは違う。低地だからだろう。木々の佇まいにもほんの少しだけだが南の国の曖昧さが感じられる。曖昧さといっても陽気さというのではない。そこはやはり冬の厳しいモンゴルの特徴を有してはいる。しかしロシア国境の町だ。どことなく漂う港町のような、少し旅なれていなければ理解できない微妙なニュアンスだ。それはナゼダカ鼻腔に届く、いや匂いというのでもなく、空気の湿度の肌触りというか、そんなものだ。

港町や国境の町は人種が複雑だ。人間はなぜそうなるのだろうか。はるか異国へのエキゾチシズムはDNAをゆすぶるのだろうか。人々ははカザフ族とウイグル族だろう、目鼻立ちが違う。女たちもトルコ系の地が匂う。まさに西域の果ての混沌がここにもある。街の西にリゾートホテルがあるという。いやリゾートホテルという一般の通念は持たないで欲しい。谷間に作られた共産主義時代の高官らの保養所だ。幾度も路を間違えながら違う山から尾根を越えてたどり着いた。

ここをビバークにしたらヘリは降りられない。しかし遠く光るウブスの湖面が見える。湿度のある空気はモンゴルでは見ることのない、日本のような美しい濃淡のグラデーションだ。

宿の女がこちらに向けて楽しそうに歩いてきた。

 

(第8回 終わり)


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